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ドラマ:シャーロック・考察と予想/「アントールドストーリー」とは何か?

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こんにちは、macomoです。
最近はめっきり秋ドラマのシャーロックにはまっています。正確にいうと、ディーンフジオカにハマっていまして、彼がお芝居しているところを見るのがやたら楽しく興奮します。第一話の平均視聴率も13%弱と大変好調で、いまみんなが楽しみにしている人気ドラマなんだな、と嬉しく思っています。令和元年にいきなり表れためちゃめちゃ面白いドラマの魅力をたくさんたくさんしゃべりたい、そんな気持ちにかられます。
 
さてこのドラマはタイトルにもある通り、コナンドイルが著した世界的ミステリにして、キャラクター小説の草分け的存在ともいえるシャーロックホームズシリーズを原作としています。ところが、タイトルをよくみるとサブタイトルもついていますね。「アントールドストーリー」。つまり、語られざる物語。これは一体どういうことなんだろう? 気になって調べてみました。知っている人は当然ご存じなんですけど、基本のおさらいということで、アントールドストーリーの意味をまとめます。


アントールドストーリーとは?

アントールドストーリーとは、読んでそのまま「語られざる物語」です。これにははっきり意味がありまして、原作のシャーロックホームズシリーズのなかには、「事件名だけほのめかされるけど小説内でははっきりとは書かれていない事件」というのがいくつもあります。このドラマは、そこにフォーカスをあてた企画なんですね。
 
ドラマを企画したプロデューサー太田大さんいわく、脚本家の井上由美子さんからアイデアを受けて「原作でほのめかされているだけで詳細が明かされない《語られざる物語》に最新の解釈を与える」というプランを思いついたそうです。
 
これが非常にすぐれた発明で、ホームズを知らない人にとってはひたすら新鮮で、ホームズを知り尽くした人にとっては「ほほぉ~、そうきたか!」とニヤリとでき、かつ原作ファンであればあるほど逆に批判しづらい批判キャンセラーとしても機能するという、なんとも絶妙なテーマ設定になっています。
 

語られざる物語:バターとパセリ

第一話で獅子緒ことディーンフジオカが好奇心にかられたキーアイテム「バターとパセリ」。これは原作の「六つのナポレオン像」にさらっと一文だけ登場します。ホームズは、自称「千の犯罪事件に精通する頭脳の持ち主」で、あの事件はこれに似ている、この事件はあのときのあの事件を想起させる、とか、脳内の犯罪本棚からあれこれ解決に役立つ例をとりあげて説明をくわえる、というお決まりのシーンがあります。
 
で、バターとパセリ。これは相棒のワトソンにむけて「あのアバネッティ家の恐ろしい事件のことを思い出したよ、ほら暑い日にパセリがバターにやけに沈み込んでいたあの事件さ」と話します。ここ。ここ。これ。この一文。これが、バターとパセリの逸話。ここだけ。この、全シリーズの、わずか一文から着想をうけて、医師の赤羽家(アバネッティ家)で巻き起こる欲望と愛と懺悔の物語を一本のドラマに仕立てあげたわけです。すごいねー、感心。
 
おまけにいうと、こういう「語られざる物語」というのはホームズファンのなかでは有名で、ファンのなかには語られざる物語に独自の解釈をくわえて「ぼくのわたしの語られざる物語を語ってみた」みたいな楽しみ方も受け入れられています。
 
なので、厚いファン層の一部にもともとこうした「語られざる物語に解釈を加える遊び」という二次創作ジャンルがあり、大らかなホームズファンであれば(その出来不出来にかかわらず)それを許容し、無限のホームズ世界の拡張を喜ぶ土壌があるわけです。
 

制作上の意図は?

前述の太田プロデューサーが目指すのはまさにここなんだと思います。ドラマ・シャーロックとは、スタッフ一丸となってこうした「語られざる物語を語るファン」の末席に加わりたい。広大なホームズ世界の新たな拡張に寄与する、謙虚な立場での二次創作。その願いが、誠実さが、あるいは大胆不敵さが、アントールドストーリーというサブタイトルに込められていると感じます。
 

アントールドストーリー予想

さて、さて。記事タイトルに「予想」と書いてしまったのでもうひとつお話をします。僕はこのアントールドストーリーというサブタイトルには「原作の語られざる物語を遊ぶ」という意味にくわえて、もうひとつダブルミーニングになっていくのではないかとにらんでいます。
 
作中で岩田剛典演じる若宮が、音声入力でライフログをとっているという描写が繰り返しあるのですが、おそらく彼のこの記録がもうひとつの「アントールドストーリー」になっていくのではないでしょうか。
 
彼は第一話でこう言いました。「もし自分になにかあったら、この記録を公開してくれ」と。これってどー考えても前振りですよね? いつか、作中で公開するタイミングがくるんじゃない? そうだな、たとえば最終話の1話手前くらい。このログに焦点があたる時がきて、若宮がピンチになって、これもう公開しちゃうの、しちゃわないの、語られちゃうの、語られない、どうなの、どっちなの~~~~!?ってなって。
 
で、ディーンフジオカが絶体絶命の岩ちゃんの危機を颯爽と救って、ギリ!ギリで公開しなくてすむー……からの「はい、これがアントールドストーリー!」ってことなんじゃね?!
 
えー、なにそれ! もう岩ちゃんがヒロインじゃん。めっちゃ救われるお姫様役じゃん。毎話どんな美女が出てきても岩ちゃんが正妻じゃん。美形と美形の高密度な友情が一周回ってロマンスにしか見えないやつじゃん! そりゃもう見なきゃじゃん!
 

事実を積み重ねて真実を暴く

ちょっと興奮しました。すいません。僕はこのドラマの根底にあるもの、またはディーンフジオカが表現しようとしているものは、「事実は真実より興味深い。真実はたいていつまらないけど、偽善が滅びるときの醜さだけは美しく、面白い」ということなのではないかと考えています。
 
知的好奇心のモンスター・獅子雄にとって、意外な事実は発見であり、未知の克服であり、快感です。事実は興奮をもたらし、面白いと感じさせてくれるもの。
 
一方の真実とは、獅子雄にとってはそれほど価値のあるものではなく、ことの善悪や罪の所在などはどうでもいい。けれど、積み重ねた事実によって嘘が突き崩され、真実めいた本性が明かされるとき、獅子雄は「美しい!」と賛美します。
 
なんというか、衝撃的な上から目線! 美醜に対する圧倒的な傲慢さ。美しいもののほころびと、その醜さが対比的に示す真実めいた美を、他ならぬ美の化身みたいなディーンフジオカが上から目線で評価するという「絶対にこの人じゃなきゃ成り立たない展開」。ふるえますね。奇跡としか言いようのないキャスティングと脚本。おもしろいですね。このドラマを面白いといわずになんと言いましょうか。これは1話で提示され、2話でも踏襲されたパターンで、3話以降も同様に繰り返されるのか期待がかかります。
 
とりわけ2話ラストで菅野美穂が演じてみせた「聖女がパトカーに乗せられる間際に見せる悪の笑み」が、それはそれは寒気がするほど美しく、邪悪で醜悪なのに、うっとりさせられる。獅子雄が言う「美しい!」という言葉がこれでもかと腑に落ちる、すさまじい説得力をもった1秒間です。
 

まとめ

話が途中で脱線してちょっとよく分からなくなりました。上手に記事にできる人は、同じ内容でもっときれいにまとめてください!読みにいきます。とにもかくにも言いたいことは、ドラマ・シャーロックアントールドストーリーを観ようね、ってことです。ディーンフジオカファンは必修科目だと思いますけど、そうじゃない人もぜひ観ましょう。
 
ホームズのことぜんぜん知らなくても面白いし、ディーンフジオカのことぜんぜん知らなくても楽しめる。演技がよく、音楽もよく、小ネタのきいた脚本も、美醜をめぐる事実と真実のせめぎあいも、岩ちゃんがお姫様役やってることも全部面白いです。3話も超面白そうなので僕は視聴継続決定しました。
 
それでは、また。